ーこれが始まり、地形の基本ー
(パワーポイント動画26分52秒+解説)
▼パワーポイント動画(YouTube)26分52秒
追加解説
ER地盤塾 第二回「宅地地盤の考え方の基本」
-調査報告書のチェックリストを読めるようになろう-
▶始めに
第二回の動画では、「地形による地盤の良し悪し」と「地盤判定のための地形の見方」を説明しました。
こちらのブログでは、ERさんが実際に地盤判定書に添付している現地チェックリスト(現地調査・資料調査結果)を元に、現地チェックリストの読み解き方を解説します。。
▶現地チェックリスト「現地調査・資料調査結果」について
現地チェックリストは、調査員が現地で調査の前後に敷地周辺を観察して記録したものです。
各地盤会社がそれぞれの書式を採用していてバラバラなことが多いので、慣れていないと読むことが億劫になる方もいると思います。
様式は様々ありますが、現地チェックリストの目的は
1) 地盤判定のための地形チェック
2) 地盤補強工法の選定の参考
という点は各社共通です。
そこを押さえておけば、様式が変わっても億劫に思うことなくチェックリストを読めるようになると思います。
▶調査方法
どんな調査を行ったかを記載します。戸建ての場合、大抵は「SWS試験」と書かれていると思います。
昨年(2020年)10月にJIS規格名称が従来の名称の「スウェーデン式サウンディング試験」から「スクリューウェイト貫入試験」へ変更になりました。それにともなって、移行期間中は会社によって二種類の呼称名を目にするかもしれませんが、どちらも同じ試験です。
それから、直接土を確認するサンプリングを行う場合があります。腐植土確認、関東ローム層などの特殊土確認、限界はありますが盛土材の確認などのために行います。試験数値が1kNの0回転層(=100kg自沈層)の時、関東ローム層が確認されたら地盤の強さが50kN/㎡になったり、腐植土が確認されたらそれに対応する補強工法や補強深度を検討したり、というように確認できた土によって地盤の判断が変わります。直接土を見ることは、より正確で建物計画に合わせた地盤判定ができるので、とても重宝します。
ERさんも土質確認を行った場合は「簡易サンプリング」と記載しています。
もし、目的がわからない試験名が書かれていたら、何を調べるのか、どういう調査方法なのかなど、直接地盤会社に質問してみましょう。
▶地形判別
土地の地形が記載されています。判別する資料は動画で紹介したものを使うことが多いです。大抵は土地条件図で調べた地形名を記載しますが、複数の資料から総合的に判断することもあります。土地条件図は山地でも大規模造成地で腹付け盛土が確認できたら「盛土」と記載することもあります。
同じ数値でも、台地と低地では地盤の評価が変わる(判定結果が変わる)ことがあるので、地形の確認は重要です。
まずは、土地条件図や地形分類図はフリーで閲覧できるので、ご自身でも調べてみましょう。
▶地形の傾斜・位置
山地や丘陵地は土地も周辺道路も傾斜していることが多いです。平坦部と言われる台地も、台地の縁に位置していると谷地へ向かって傾斜していることがあります。
傾斜していると、宅盤をフラットにするために下がっている方に盛土されていることがあります。また、谷地へ向かっての傾斜途中だと敷地の途中で谷地寄りの弱い地盤に切り替わっていることもあります。
そのため、標高が高く地盤が良い傾向の地形だとしても、どちらに向かって下がっているのか、傾斜の上部・中部・下部のどこに位置しているのか確認することは重要です。
傾斜具合、傾斜の位置によっては補強が必要と判断することがあります。逆に、多少数値にばらつきがあったとしても、角度が緩くて傾斜の上部に位置している場合は補強不要と判断することもあります。
▶土地利用の履歴
土地の利用履歴も判定に大きくかかわってくることがあります。
人の手が加わっているか(盛土・掘り返しなど)、建物が建っていたことがあるか、盛土されているなら元の地形は何だったのか、などを確認します。建物が建っていると地盤に圧がかかっていてある程度締め固まっていると判断できるので、低地でも数値によっては履歴の有無で判定が変わることがあります。また、水田への盛土の場合は盛土下部の元の地盤に注意をしながら判定します。
もし、ご存知の履歴(特に掘り返し)がこの中に記載されていない場合は、積極的に地盤会社へ知らせてください。地盤会社でも裏を取るはずですが、まずは情報を伝えることが大事です。
▶既存建物
既存建物の有無は、解体後に再調査の可能性を把握しておくだけでなく、建物の異状事項(傾斜、ひび割れなど)を確認し、判定に活かします。
▶周辺の異状
敷地周辺の建物、電柱、水路などの異状(傾斜、ひび割れ、ずれなど)を確認します。電柱や水路は地盤の影響を受けることが多いので、異状が見られたら軟弱地盤の可能性があります。
▶隣地・境界状況
敷地に接した東西南北の隣地の利用状況(宅地、道路、水田など)と異状事項について書かれています。また、隣地との高低差や擁壁があればそれについても記載されています。敷地に接しているので、判定を左右する要素になりやすいです。
▶造成状態
盛土造成地は、必ず地盤補強が必要になる、ということはありません。
条件が揃えば補強不要となることもあります。
条件とは、
・盛土経過年数が一定数経過しているか
・盛土材や盛土状況が適切か
・地中障害物(ガラや不適切材)がない
・地中埋設物がない、もしくは距離が離れている
・既存擁壁は適合擁壁か、異状事項が見られないか
などです。チェックリストにはこれらをチェックするための項目が並んでいます。
盛土造成地は不同沈下事故が起こりやすい地盤状況ですが、これらを入念にチェックし、数値も問題がなければ補強不要と判断することができます。
しかし、ひとつでもクリアできないと判断は厳しいものになることが多いです。
ここまでは地盤判定のための地形チェックです。
▶工事関係
道路幅、進入路状況、通行障害・規制、上空障害などについて書かれています。
補強工法によっては、道路幅が狭くて施工機が入れない、擁壁現場で電線があるために機械を釣りあげられないなどの現場状況で採用できない場合があります。
補強工事の相談をもらった時には改めて現地調査を行うことが多いですが、せっかく調査で現場に入っているので、調査時に知りえる情報をチェックしています。
もし、前回と違う見慣れない工法で提案された場合は、理由を直接訪ねると同時にこの項目を見返すと理解が深まると思います。
▶特記事項
これらの項目にないことで、調査員が現地で立会人や他業種の方から聞いた情報などが記載されています。判定を左右する情報だけでなく、もしかしたら建築計画に関わることもあるかもしれないので、チェックしておくことをおすすめします。