ー「直接基礎でOK」の証拠を整えていくー
(パワーポイント動画 20分47秒+解説)
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追加解説
ER地盤塾 第四回「地盤判定のやり方」
-自沈層=地盤補強が必要、ではない-
▶「自沈層があるので地盤補強が必要?」自沈層の評価に疑問・・・
地盤判定書で、たまに「自沈層が見られるので地盤補強が必要です」という考察文を目にします。特に地形や土、近隣状況などの事項には触れられていません。
住宅事業者さんの中には、そういった判定内容に漠然とした疑問や不満を持っている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
地盤判定の目的は「支持地盤や基礎形式の選定」です。
この目的をしっかり押さえている地盤会社や判定者は、直接基礎を選定できるために複数の手段を使って地盤判定を行います。
事故率が低くてしっかり地盤判定を行っている会社や判定者が、自沈層をどのように評価しているのか、今回は告示第1113号をもとに説明します。
▶そもそも告示第1113号とは何について書かれたものか
正式名称は「国土交通省告示第1113号」です。インターネットで全文を確認できます。
どんな案件か、告示第1113号の冒頭を要約すると、
「建築基準法施行令第93条に基づいて、支持地盤と基礎形式の選定のための調査方法と、試験結果に基づいて算定する方法が書かれている」
となります。
建築基準法施行令第93条では、支持地盤と基礎形式の選定について、
「国土交通大臣が定める方法によって、地盤調査を行い、その結果に基づいて定めなければならない」
と書かれています。双方を読むと、
「国土交通大臣が定めた方法は告示第1113号に書かれている」
ということが分かります。
▶告示第1113号では「自沈層は地盤補強」とは書かれていない
告示第1113号第2には、調査結果(試験数値)の使用方法として算定式が書かれています。
しかし、SWS試験によって算定する場合のただし書きがあります。
このただし書きで注目したいことは、
「指定の自沈層がある場合は、建築物に有害な損傷、変形及び沈下が生じないことを確かめなければならない」
という部分です。
「自沈層があったら別途検討が必要」とは書かれていますが、「自沈層があったら地盤補強」とは書かれていません。
つまり、有害な損傷と変形及び沈下が生じないことを確かめられたら、直接基礎の選定で良いのです。
▶変形及び沈下の確認方法は告示第1113号には書かれていない
しかし、「確認しなさい」とは書かれているものの、確認方法については書かれていません。
確認方法は、日本建築学会の発行書籍「小規模建築物基礎設計指針」の中にある「沈下の検討」で書かれています。
▶沈下量の計算は「不同沈下が生じやすい地盤(地形)」の「対象層」で行う
指針の中の「沈下の検討」では、
・検討する項目と算定方法および評価基準
・圧密対象層(沈下量計算を行う層)と不同沈下が生じやすい地盤
について書かれています。
検討手順を簡単にまとめると、
① 不同沈下が生じやすい地盤における対象層を拾い出す
② SWS試験の各測点において対象層の沈下量を計算する
③ 測点間の沈下量の差を測点間の距離で割る(傾斜角・変形角となる)
④ 沈下量、傾斜角・変形角ともに参考値と比較する
となります。
▶不同沈下が生じやすい地盤、沈下量計算の対象層は指定されている
圧密対象層について「飽和した軟弱な沖積粘性土あるいは高有機質土」とされていますが、SWS試験では土質も状態も確認することは難しいので、簡易的に「SWS試験のWsw(おもりの重さ)が0.75kN程度以下の層としてもよい」と書かれています。
また、不同沈下が発生する可能性が高い地盤(地形)は
・高有機質土(腐植土)が堆積する地盤、傾斜地盤、土の種類や締まり具合が不均一な地盤
・沖積層でSWS試験のWswが0.75kN程度以下
・盛土地盤でSWS試験のWswが1kN程度以下
・擁壁の埋め戻しなどでSWS試験の平均Nsw(1m当たりの半回転数)が40程度以下
これらは逆に言うと、少なくとも以下の地盤は検討・計算対象外ということです。
・回転層は計算対象外(盛土・埋戻し地盤は除く)
・洪積層(沖積層より古い地盤。山地や台地など)は検討対象外
・砂層、礫層は計算対象外
▶沈下検討でも、地形と土の正確な判断が必要
沈下検討は地形と土によっては対象外となります。SWS試験では土を見ることができないので、推定することが求められます。推定できないからすべての土層で沈下量計算を行う、としてもよいですが、極度に安全側(補強判定になりやすい)になることは想像しやすいと思います。
事故率が低くて的確な判定を行う地盤会社さんや判定者さんは、主に地形や同じ地形上で同じくらいの標高上のボーリングデータを参照するなどして推定します。または、SWS試験時の貫入音(ジャリジャリ、ガリガリ)から推定することもありますが、音を拾う調査員さんの聴力・注意力などの力量に左右されるので、専門家以外の方は参考程度にとどめた方が良いです。
▶地形と土の推定を悪用し、危険判定に持ち込む会社には要注意
沈下量を少なく計算し無理やり直接基礎へ導こうとする会社もあります。本来は対象層である土層を対象外とするために、きちんとした裏付け根拠なく都合よく土質を推定します。
それでは本来の目的である「建物に有害な損傷変形及び沈下が生じないことの確認」ができず、不同沈下を引き起こしかねません。
地形と土の確認は、誰でもインターネット上でフリーで調べられます。
SWS試験における土質の推定が適切かどうか、ぜひご自身でも確認してみてください。
それだけでも事故を防ぐ設計の手段のひとつになります。
▶最後に
盛土、埋戻し地盤は人の手が加わっているので、沈下検討だけでなく経過年数や盛土材料の情報も含めて総合的に判断することが必要です。
計算方法については省略しましたが、全測点で沈下量計算をし、測点間の沈下量の差から傾斜角と変形角を算出することは、結構な手間がかかります。更に、SWS試験の数値を入力するだけでなく、設計GLと基礎の根入れ深度をできるだけ正確に設定したり締固め効果を考慮するなど細かい調整をする地盤会社もあります。
地盤会社へ沈下検討を依頼する際は、地形と土の判断方法や数値の設定方法などを聞いてみるといいと思います。