第5回ER地盤塾 自由な土地選びで気をつけるべきこと

ー土地の災害リスクと自然災害リスクの調べ方ー

(パワーポイント動画 18分15秒+解説)

 


▼パワーポイント動画(YouTube) 18分15秒

追加解説

ER地盤塾 第五回「自由な土地選びで気をつけるべきこと

 -戸建て向け、液状化の簡易判定法の報告書を読むポイント-

▶SWS試験に試料採取と地下水位測定をプラスして行う簡易判定方法

 SWS試験を利用した液状化の簡易判定はいくつかありますが、簡易判定であれば、これが一番シンプルであることと一定の有効性があるので、今回はこちらを紹介します。

 この方法は、日本建築学会の「小規模建築物基礎設計指針」に書かれています。

 対象層は沖積層(新しい時代の地層で基本軟弱地盤)の地表面から5mの深さの間で、土質と地下水位を確認し、それを元に液状化層と非液状化層を設定して所定のグラフへ点を落とし、液状化による影響を大中小で判定するものです。

 

▶簡易判定を行う指標

 液状化ハザードマップで液状化の可能性が「非常に高い」となった場合や、敷地の地形区分が「液状化可能性 大」に分類されている場合に、簡易判定を行うことで現地での調査結果が分かり、より詳細に液状化の可能性が判断できます。。

 地形区分による可能性については下記の表と図を参照してください。

▶液状化する地層の条件。推定土質と参考水位では不適当な理由

 液状化する地層の条件は

「地下水位より下の砂層(地表面から5mまで)」

 です。

 確実に、砂層かどうかと、地下水位の有無とその深度、を把握する必要があるため、現地で土を取り、地下水位測定を行う必要があります。

 SWS試験結果の推定土質は地形や近隣ボーリングデータから推測しているもので、SWS試験での水位はあくまでも参考値です。

 液状化判定においては、砂層の有無、地下水位の深度は判定結果をシビアに左右するため、推定結果や参考値を使用することは判断を誤りかねないので推奨できません。実際の土を採取して土質を確認することと適切な地下水位測定を行うことに勝ることはありません。

▶液状化層と非液状化層を設定し、それぞれの層厚を割り出す

 液状化層は「地下水位より下の砂層」です。

 非液状化層は「地下水位より上の砂層」、「粘性土(細粒分含有率Fc>35% ただし埋め立て地盤などは粘土分含有率10%超または塑性指数15%超)」です。

 つまり、

「砂層であっても水位より上は液状化しない」

「粘性土であれば水位より下でも液状化しない」

 といえます。

 上記の条件で、現地での試料採取と地下水位測定の結果を元に地表面からGL-5mの範囲でそれぞれの層を設定し、層の厚さを割り出します。

 例えば、非液状化層は地表面からGL-3mまで、液状化層はGL-3mからGLー5mまでだった場合、非液状化層の層厚は3m、液状化層の層厚は2m、となります。

 液状化層と液状化層のモデル図を下に記します。

▶判定は、グラフ上の非液状化層(横軸)と液状化層(縦軸)の交差点で決まる

 非液状化層と液状化層の厚さを割り出した後、所定のグラフを使い、判定結果を出します。横軸(非液状化層)と縦軸(液状化層)の交差点が、グラフ上の「大中小」のどの範囲に入っているかで結果が決まります。

 例えば、非液状化層が3m、液状化層が2mだった場合、横軸(非液状化層)の3m、縦軸(液状化層)の2mの交差点が判定結果となり、液状化の影響は「小」となります。

 また、非液状化層が1m、液状化層が4mだった場合は、横軸の1mと縦軸の4mの交差点が判定結果となり、液状化の影響は「大」となります。

▶簡易判定の結果が「影響 大」だった場合

 影響が大だった場合、

 ① 対策工事が現実的か検討する

 ② 通常の地盤補強工事の検討に液状化の影響低減を加味させる

 ③ 液状化が起こった場合に建築物への被害軽減と沈下修正工事が容易となる基礎設計を行う

などについて検討することが望まれます。

 

 もちろん理想は対策工事を行うことですが、地層構成によっては非常に高額になる場合があります。地層構成、費用面、対策効果のバランスを取りながら災害リスクへの対策を取って欲しいと思います。