第6回ER地盤塾 自由な土地選びで気をつけるべきこと

ー擁壁宅地のリスクと対策についてー

(パワーポイント動画 15分39秒+解説)

 


▼パワーポイント動画(YouTube) 15分39

追加解説

ER地盤塾 第六回「自由な土地選びで気をつけるべきこと

 -盛土造成地のリスクと対策・施工基準-

▶盛土造成地のリスク(全体のリスクと個々の宅地のリスクは別で考える)

 近年、地震や大雨による盛土造成地の被害が大きく取り上げられることが増えてきました。国土交通省や各自治体で「大規模盛土造成地マップ」が整備・公表されましたが、これは盛土造成地の被害に関する住民の理解を深めることが目的です。

 では、盛土造成地にはどのようなリスクがあるのでしょうか。

 

 まず、造成地全体のリスクです。「大規模盛土造成地の活動崩落対策推進ガイドラインおよび同解説」によると想定被害形態は下記のようになります。

 

・すべり崩壊(水圧の上昇、盛土下の不安定な地山、盛土のり面の表面の不安定化)

・擁壁倒壊(擁壁が不安定化、擁壁の背面土の崩壊)

 

 

・すべりによる変形(盛土の脆弱性(流動化、締固め不足)、切り盛り境界の不同沈下)

・擁壁変形(背面土の締固め不足)

 

個々の宅地のリスクは「小規模建築物基礎設計指針」によると下記のようになります。

 

・擁壁変形(倒れ、崩壊)

・擁壁埋戻し不良による不同沈下

・新規盛土の荷重による盛土下の軟弱層の圧密が原因の不同沈下

・不適切な盛土材による不同沈下

・切土と盛土にまたがる地盤バランスの悪さによる不同沈下

・隣地が盛土したことによる沈下

▶盛土造成地は確かにリスクが高い。その土地が盛土かどうかは確認したい。

 宅地造成工事に関する技術的基準は「宅地造成等規制法」で規定されています。しかし、切土や盛土を行って造成した地盤は地震や豪雨で災害が発生しやすいとされ、実際に大きな被害が起きていることも事実です。また、自然災害が起こらなくても不同沈下のリスクも高いです。

 

 まずは下記の資料を元に、調べたい土地が盛土かどうかを確認しましょう。

・大規模盛土造成地マップ

・過去の航空写真

・できれば造成図切り盛りの確認 など

▶購入予定の土地が盛土だったらどうする?

 盛土宅地は自然災害に加え、地盤災害のリスク(不同沈下の可能性)も高いです。自然災害リスクは個々の宅地の対策では完全に防ぐことは難しいですが、地盤災害リスクは対処方法があります。そのためには、

「その盛土が充分に締め固まっているか(圧密沈下の可能性がないか)の確認」

が重要です。

 宅地防災マニュアルや基礎設計指針の施工基準や基準値をもとに確認し、確実に判断することが地盤災害リスク(不同沈下事故)を防ぐ第一歩です。

▶盛土宅地で確認すること

盛土が充分に締め固まっているかの確認項目は主に下記になります。

 

・盛土材料の確認

・締固めの施工基準

・締固めの数値確認

・地盤バランス

・盛土以前の地形と土地利用

・擁壁があれば擁壁の安全性の確認

・今後、隣地で盛土の予定があるか(ありそうか)

 

 盛土材料は粒度分布が良く締め固まる土で、主に山砂やクラッシャーラン(砕石)が適しています。水を多く含んだ粘性土、有機質(腐植)土は適していません。また、ゴミやレンガや瓦礫などの廃棄物はもってのほかで、どんなに数値が良くても不同沈下の可能性が非常に高いので地盤補強が必要です。

 

 締固めの施工基準は、宅地防災マニュアルなどに書かれています。施工機械はランマーで、層厚30cm以下ごとによく転圧をかけること(3~8回が参考)となっています。プレートで施工することは転圧効果がまったく見込めないので不可です。

 

 締固めの数値基準は、小規模建築物基礎設計指針の下記の図を参考にしましょう。

 

 

 地盤バランスの良し悪しを確認することも重要です。どんなにSWS試験の数値がよくても切り盛りにまたがっていたり、あまりにも測点間の数値に開きがあったり、ゴミや瓦礫に当たって貫入できていなかったりすると不同沈下の可能性が高くなります。追加の試験や土質確認などを行い、安全性が確認できなければ地盤補強が必要です。

 

 盛土以前の地形と土地利用は、盛土下の地盤の圧密による不同沈下を懸念しています。元の地形が池、河川、おぼれ谷の時、以前の土地利用が水田で荷重履歴がない場合などは、盛土の下に軟弱層が厚く堆積している可能性が高く、この層が圧密することで不同沈下が引き起こされます。

 斜面地の場合には、盛土の厚さが異なったり切り盛りにまたがるなどで地盤バランスが悪いことがあります。

 

 擁壁の安全性の確認については第六回の動画を参考にしてください。

 

 隣地の盛土によって盛土下の地盤が圧密すると、地盤が繋がっているため自分の敷地にも影響が出る場合があります。例えば、水田への盛土造成地で自邸の竣工後に隣地の盛土施工が始まるなどの場合です。そういったことが予想される場合には、影響を受けて沈下しないための検討やその危険を見込んだ地盤補強を施すことが有効です。

▶最後に

 盛土造成地はとてもリスクが高いです。造成地全体と個々の宅地でリスク内容が異なることも特徴です。まずは、調べたい土地が盛土かどうか確認し、盛土だった場合には盛土が充分に締め固まっているかの確認を確実に行い、不十分であれば不同沈下を防ぐために適切な地盤対策を施しましょう。