第9回ER地盤塾 家を傾かせない補強工法選定

ー 土地の状況別に地盤補強の考え方を知る ー

(パワーポイント動画 19分04+解説)

 


▼パワーポイント動画(YouTube) 19分04

追加解説

ER地盤塾 第九回「家を傾かせない補強工法選定

 -補強体の長さを変える場合の範囲の設定方法(柱状地盤改良の場合)-

柱状地盤改良イメージ
柱状地盤改良イメージ
柱状地盤改良施工手順
柱状地盤改良施工手順

▶軟弱層の厚さが違う時の補強設計

 地盤調査の結果、各測点で軟弱層の厚さが違う場合、補強設計は一番軟弱な測点で検討書(調査データをもとに補強長、補強体の必要本数を算出する)を作成します。

 ですから、軟弱な層が薄い測点やそれほど軟弱でない測点の補強長も一番軟弱な測点にあわせることになります。

▶各測点毎に補強長を検討することもある

 一番軟弱な測点にあわせて全体を同一に補強することは基本安全側なのでそれでも良いのですが、各測点毎に検討書を作成し、それぞれの測点の地盤状況に補強長を合わせることもできます(補強体の必要本数は一番軟弱な測点を採用する)。

▶補強長ごとに担当エリア(配置範囲)を決めるのは難しい

 次は、どの範囲で長さを切り替えるかを決めなければなりません。

 SWS試験での測点は建物配置と中央の五箇所が一般的です。各測点で軟弱層の厚みが違う地盤では、建物の幅と奥行きが広ければ広いほど、調査箇所数を増やさない限り地中の地盤変化を連続的に推測することは困難になります。これは標準貫入試験であっても同じです。補強長や杭の支持層判断のためにも、建物の大きさと地盤調査の調査箇所数の関係は重要です。

▶1測点だけ異常に弱い。どう範囲を決定する?

 地盤調査の結果で、4測点は自沈層が2mまで。四隅のうち1測点だけ自沈層が7mまで見られる。というような地盤の時には、補強長をどこで切り替えればよいのでしょうか。

 安全側で考えるべきなので、軟弱層に合わせた補強長の範囲は一番弱い測点から延長上と中央の測点の手前の範囲となります。延長上と中央の測点は自沈層がそこまで厚くないことが確認できているからです。

▶その決定方法は妥当とは言い切れない(危険が残っている可能性もある)

 ですが、その補強長と範囲は本当に妥当とは言い切れません。

 なぜなら、地盤状況はどこで変わっているか分からないからです。

 自沈層が厚い地層の範囲は中央ぎりぎりまでかもしれないし、じつは2mまでかもしれない。

 更に、他の測点と明らかに数値傾向が違う理由が、地形由来でなければ人為的な掘り返しが疑われ、もしかすると中央までの間にもっと自沈層が深くまで見られる可能性もあるからです。

▶補強設計に活かす補足調査をしたい

 そういった場合、たとえば一番弱い測点と中央の中間で補足データがあればどうでしょうか。

 仮に、補足データで軟弱層の厚みが薄くなれば、補強長を長くする範囲は絞られます。補足データで軟弱層が同様に厚ければ、中央まで補強長を長くした方がよいでしょう。

 もし、補足データで自沈層が10mまで見られた場合は・・・補強長をもっと長くする必要が出てきます(安全な土地づくりに支障をきたすところでした)。

▶判定だけでなく、補強検討も見据えた調査を提案できる地盤会社を選びたい

 地盤会社によっては、1測点でも軟弱なデータが見られたら地盤補強判定になるので、そこで調査を終了することも少なくありません。

 しかし、それだけでは安心安全な土地づくりのためには不十分と言わざるを得ません。

 判定だけでなく補強検討も見据え、「その軟弱さは局所的なのか、もっと弱くなる可能性はないのか、局所的でなければどの範囲まで軟弱さが広がっているのか」といった視点で補足調査を行うことができる地盤会社が頼りになります。

 と言ってもやみくもに補足調査を行えばいいわけではありません。

 「どのような目的で補足調査を行ったのか」と聞いてみると、その答えによって本当に頼りになる地盤会社かどうかを見極められます。